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親は頑張って子どもを元気にさせる ――そして親は味方だと思ってもらいましょう【喜多徹人さん】
2023年07月12日
『子どもが不登校になったら親はどうすればいいのか』著者 喜多徹人さん
(学校法人神戸セミナー校長/高等専修学校神戸セミナー校長/カウンセラー)
『あなたの子どもはなぜ勉強しないPART2』から12年ぶりに、シリーズ3『子どもが不登校になったら親はどうすればいいのか』を上梓された喜多徹人さん。家庭の事情は個々ですが、それでも多くの方々に理解できる表現に務め、親子関係が悪化する前にぜひ読んでいただけたらとの思いを込めて今回綴ってくださった。講演、カウンセリングとかなりの数をこなす著者だからこそ、「ウチをのぞいていたんですか?」と保護者が驚くほど、親子のやり取りを見通す。タイトル通り、親はどうすればいいのかをお聞きした。
家庭の笑顔を増やすために親自身が元気でいてほしい
このごろのお子さんに対する家庭での対応が、社会常識をかさに、朝は起きたほうがいいとか、学校に行くべきだとか。親は良かれと思って関わっているんだけども、子どもはどんどんしんどくなっていく。元気が下がる。家族関係が悪くなる。不登校の9割以上がそんな感じになっていると思います。
わが校では定期的に年間10回ほど講演をやっていて、全体で400~500人は来ていただいていますが、対応には限界があるので、やはり本という形で、みなさんにできれば事前に、親子関係など事態が悪化する前に読んでいただけたら家庭の笑顔が増えるだろうと思って書きました。
私は書くこと自体はたいして時間はかからないのですが、家庭やご本人の状態によって、メッセージは変わる。こうすべきというマニュアル的なものは本来あまり良くないし、すべての家庭によって事情は違うのに、書籍ではついついマニュアル的になってしまうのです。そこをどの程度折り合い、妥協というか一般化するかというのが、一番苦労した点、難しいかったところです。
講演でも書籍でも私が大変気を遣うところは、保護者さんが良かれと思ってやっていたことが否定されると、右を向いていようが、左を向こうになるわけで、かなり保護者さんはしぼむし、落ち込まれるのです。元気が大事なので、そこも気を遣うところです。講演で話すときは20回ぐらい、「ごめん」と謝るんです。
「親を敵だと思っているのを味方だと思ってもらわなければならない」と言ったら、親は誰も敵になりたいとは思っていない。でもお子さん本人からしたら辛いんだよね、みたいに「ごめんね」は20回です(笑)
あとはみなさんがそうですという言い方をします。「あなたがうるさすぎるからダメなんですよ」「あなたが高校や大学を意識するから子どもがかわいそうなんですよ」のような言葉ではまずありません。まずは一般化する。「誰でもそうなります、みなさんそうなります。良かれと思ってついついそうするのです」などなど。その上で「子どもさんは今はこうなっていることが多いのです」とお伝えするのです。
保護者さん自身をエンカレッジするのが本書の目的です
講演を聞いた方から、「うちの家をのぞいていたんですか」と言われたことがあったんです。つまりダメだと言われたことを私はすべてしていましたと反省をしていたんです。そこからです、保護者さんを元気づけないと。前向きの気持ちに保護者さん自身になっていただかないと、親の問題だ、親が変わらないとだめだと否定的されてしまうと、嫌な気持ちだけが残り落ち込んでしまうのです。すべての講演、カウンセリング、書籍は保護者さん自身をエンカレッジする、元気づける、希望を見いだしていただけるよう常に意識しています。
子どものために周りは頑張ろうとすると、結果親を支援者扱いする。親はプロではないのです。いろんな背景、価値観、苦労があるわけです。支援者としてちゃんとやれ、とか言われるとね、途端に否定されたみたいな気持ちになって、自分が悪いんだ、自分に原因があるんだ、自分は酷いことをした、と親を落ち込ませるのです。家庭の笑顔と言いますけれども、子どもも親も含めて家族みんなの笑顔を増やしましょう。ここがポイントだと思います。
「講演でも親御さんをエンカレッジすることが大切です」
子どもの元気が出るにはどうしたらいいかを考えられるのがプロ
困っている人に本書を読んでいただきたい理由は、ここにあります。専門家とされている方でも一般論を述べられることが非常に多いのです。例えば、「動き出すのを待ちましょう」「まずは生活習慣ですかね」「ゲームのやりすぎはよくないのでルールを決めましょう」などを言われるわけです。
〇〇をやめましょう、見守りましょう、タイミングを待ちましょう、本人はエネルギー切れなので溜まるのを待ちましょう、これを言われると「親は何も言うな」となってしまい余計にストレスを抱えてしまわれることが多いのです。私はそこを変えたい。親はもっと頑張って子どもを元気にさせましょう。頑張って親は味方だと思ってもらいましょうということを本書でお願いしています。
そして、どう言えば子どもは元気になれるのか、どう言えば親は味方だと思われるのか。これはすごく勉強、練習しないと難しいです。だから子どもが不登校になったら、親はプロを目指すのです。「頑張って学校へ行こうね」ではなくて、「頼むから休んで」「あなたが学校へ行ったらしんどくなるから、あなたがしんどくなるのは見たくない」「行きたい気持ちはわかるけど、お願い休んで」という演技ができる人がプロですね。「ゲームさ、罪悪感もってやっているんじゃないの。心の底から楽しんでないの?楽しんでないと効果がないって聞いたから、楽しんでやってみようよ」と言えるのはプロ中のプロ。プロになられた親御さんを私は何人も見ています。
出席と成績とかじゃなくて、お子さんがニコニコ通えなくなったしんどい状態、元気な状態、ストレスがある状態に意識がいけばセミプロです。元気が出るにはどうしたらいいかを考えるようになれたら、プロです。言葉の取り方の選択肢が3、4つと浮かんで、今はこっちがいいかなと子どもの反応を見ながら変えることができたら1流のプロです。親がそのレベルに到達すれば、もう大丈夫ですよ。
【書籍情報】
■発 行:学びリンク
■定 価:1,650円
(本体1,500円+税10%)
■体 裁:四六判/160ページ
■ISBN:978-4-908555-66-4