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学びの多様化(その2)=「強制されたくない」子どもたち
2023年09月09日
(文:学びリンク 小林)
文部科学省が8月31日、「不登校特例校」の名称を「学びの多様化学校」と改めると発表し、改めて「多様化」という言葉が広く使われるようになりました。
フリースクールにおける「学びの多様性」については、9月2日配信の記事『学びの多様化=「不登校特例校」と「フリースクール」から見えてくるもの』の中でまとめたところですが、今回は実際にフリースクールに通う子どもたちが、そうした「多様な学び」をどのように選び取っているかを最新のデータとともにまとめています。
まず、子どもたちがどんな理由でフリースクールを選んでいるかです。NPO法人フリースクール全国ネットワークが今年9月にまとめた「フリースクール全国調査」では、フリースクールに入った動機を子ども自身に聞いています。その中で最も多かった回答は「楽しそうだったから」(66.7%)となり、2番目に多かったのが「強制がないから」(45.7%)というものでした。数ある選択肢の中で「強制がないから」という回答が約半数を占めたことはとても興味深い結果だと考えられます。
なぜ、子どもたちはそう思うのでしょうか。本調査の別のアンケートから、その根拠を垣間見ることができます。フリースクールで行われる定期的なプログラムに対して、子どもの意思をどのように反映しているかをフリースクール代表者に聞いたアンケートです。そこでは「参加するプログラムは決まっている」と回答したフリースクールは9.8%、「選択することはできるが、どれかのプログラムには参加することになっている」とするフリースクールは5.7%で、本人の意思に関係なく、子どもが何かしらのプログラムに参加することとしているフリースクールは全体の15.5%に留まりました。一方、「プログラムへの参加は、でないことも含めて選択できる」としたフリースクールは全体の83.9%を占めました。
つまり、多くのフリースクールは、多様な学びや活動を提供しつつも、その選択は子ども自身の判断に委ねているということになります。
さらに、フリースクールは入会段階から本人の意思を尊重しています。入会に際し、本人の意思を聞いているかを聞いたアンケートでは、「本人の意思を確認し、意思がある場合のみ入会している」としたフリースクールは90.0%でした。一見、当然のことのように思えますが、学校という場で考えた場合、小学校や中学校で「本人の意思を確認して入学している」場面はあまり考えられません。一方、フリースクールであっても、保護者の意思で入会しているというケースは考えられます。そうした意味で、フリースクール側が入会に際して「本人の意思を確認」していることは非常に重要なことだと考えられます。
また、子どもたちが思うスタッフへの印象や気持ちを聞いたアンケートでも、「強制しない」という回答が96.2%を占めました(「そう思う」72.2%、「ややそう思う」24.1%の合計)。つまり、どれだけ居心地の良い環境や学びにアクセスできる環境を整えても、子どもたち自身の中には「強制されたくない」という気持ちが根底にあるものだと読み取ることができます。なぜなら、入会の動機における「強制がないから」(45.7%)の回答は、「勉強がしたかったから」(9.9%)、「やってみたい講座、活動があったから」(13.6%)、「ゆっくりできるから」(34.6%)よりも圧倒的に高い数値となっているからです。
近年、フリースクールの存在は広く社会で知られるところとなりましたが、「不登校の居場所」「学びの保障」という視点だけで見られている実情もあります。しかし、今回の調査は、フリースクールが不登校の子どもたちにとって重要な存在でありながら、同時に「子どもの意思を尊重する場」であることが再確認できる結果となりました。
本調査の結果は、詳細な分析と解説を交え、『フリースクール白書2022』(2023年9月25日より)としてまとめられています。
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