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学びの多様化=「不登校特例校」と「フリースクール」から見えてくるもの
2023年09月02日
(文:学びリンク 小林)
文部科学省が8月31日、「不登校特例校」の名称を「学びの多様化学校」と改めると発表しました。より子どもの目線に立った名称にしようと、全国の特例校から新名称を募集したとのことです。
〇学びの多様化学校(不登校特例校)とは?
通常の学習指導要領によらず、不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育編成ができる学校のこと。
(主な取組事例)
・年間の総授業時間数の低減
・習熟度別クラス、学年の枠を超えたクラス編成での指導
など
文部科学省は今年3月に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を発表しており、そこでは不登校の子どもたちが「学びたいときに学べる環境を整える」という方針を打ち出していました。これは「不登校対策=学校に戻すこと」ではなく、学ぶ場所にこだわらず学びにアクセスできるようにすることだと受け取ることもできます。そんな中、今回、不登校特例校から「不登校」という言葉をなくし、「学びの多様化」と改めたことは、これまでよりも、かなり進んだ意思表明であるように感じとることもできます。
では、「学びの多様化」とはどんなものでしょうか。この言葉には様々な解釈を持つことができます。例えば、「ICT教材など、自分に合った学び方」であったり、「午後から登校するなど、体調に合わせた学び方」といった発想もできます。しかし、これは「学び方」の多様化です。
一方で、「学び」という言葉に視点を向けると、その解釈はさらに広がります。例えば「教科を学ぶこと」「主体性を学ぶこと」「人間関係を学ぶこと」などでも、「学び」の意味合いは変わってきます。
そんな中で、不登校の子どもたちが利用するもう一つの存在が「フリースクール」です。フリースクールはこうした様々な解釈ができる「学びの多様性」を長年育んできました。
〇フリースクールとは
学校外の居場所・学びの場を提供する教育施設
2015年の文部科学省調査では、小学生から19歳以上までの7,011名が通所。義務教育段階(小学生・中学生)では、4,196名が通所している。
フリースクールは一般的に「不登校の居場所」という印象を持たれていますが、実は、不登校の有無に関わらず「学校外の学びの場」として利用する子どもたちもいます。フリースクールそのものには定義や制度がなく、各スクールの理念や方針によって活動内容も様々です。一方で、「学びの多様化学校(不登校特例校)」は、国の不登校対策の一環として制度化された学校です。
なお、日本における「フリースクール」という言葉は、一般的に認識された総称であり、スクールによっては「フリースクール」を名乗らない施設もあります。(※海外ではフリースクールが学校として認可されているところもある)。
〇フリースクールの主な呼ばれ方
・フリースクール
・フリースペース
・オルタナティブスクール
・サドベリースクール
・デモクラティックスクール
・シュタイナー学校
・中等部
・ホームスクール
・ネットスクール
など
つまり、「フリースクール」と一言で言っても、各スクールによって設立背景や考え方が異なり、「フリースクールとは」というものを定義づけすること自体はとても難しいことなのです。
ただ、「定義づけできない」ことは、一方で「学びの多様性」を秘めていると考えることもできます。
NPO法人フリースクール全国ネットワークが昨年2022年に行った「フリースクール全国調査」が今年9月にまとめられました。この調査で、各スクールが「定期的に行っている活動」について聞いたところ、最も多かったのは「体験的な学び」で、全体の90.6%を占めました。これは2番目の「教科学習」(72.5%)よりも18.1ポイント大きい数値となっています。
また、定期的に行う「学びのプログラム」に絞って聞いたところ、「個別指導」(72.5%)、「授業」(46.6%)をおさえ、ここでも「体験的な学び」が88.2%と最も多い数値となりました。同時に「表現的な学び」という項目には64.6%と多くのスクールが回答しています。
このように、フリースクールでは「学び」を広く多様にとらえていることがわかります。
また、別のアンケートでは、こうしたフリースクールの活動をどのように決定しているかを聞いています。その結果では、全体の75.4%が子ども・若者自身で意思決定していることがわかりました。さらに、数は少ないものの、「スタッフの人事権」(7.2%)、「財政や運営について」(6.0%)までもを、子ども・若者自身が意思決定に関わっているスクールもあるのです。
こうした活動の中で、子どもたちはどのように成長しているのか。今回の全国調査からは、子どもたち自身のフリースクールでの変化やとらえ方も見えてきています。調査の報告書は『フリースクール白書2022』としてまとめられています。