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著者インタビュー

不登校を脱する=自分の「矢印」を感じられる【加藤善一郎さん】

2022年10月13日

 

『マンガ 脱・「不登校」』(シリーズ1~3)著者

加藤善一郎さん

(小児神経科医/岐阜大学 教授/不登校特例校「岐阜市立草潤中学校」こころの校医)

 

起立性調節障害(OD)の認知が広まった一方で、多くの「誤解」も生まれています。加藤先生は、不登校の本質は「学校に行かないことで生じる種々の非常に困った誤解を含んだ状態」だと話します。その真意やシリーズ最新作である第2弾、第3弾出版の背景についてお聞きします。

 

 

長期化する不登校の背景にある

「OD複合型」

 

 前著から3年が経ち、外来でも『マンガ 脱・「不登校」』を片手に受診される方が増えてきました。受診される方がOD・検査・治療法への理解をすでに持たれており、比較的スムーズに診療が進むことが多くなってきています。

 しかし、「治療を続けても症状が良くならない」「症状が良くなっても登校に結びつかない」といった誤解が、保護者の方や学校の先生、さらには医療者の間でも多くみられるようになりました。

 OD患者さんには、ODがメインの病態で、その症状が改善されるだけで登校に結びつく「OD単純型」と、ODとは別のプラスアルファの要素も一緒に考えなければならない「OD複合型」とがあります。実は私が診ている患者さんのほとんどが「OD複合型」です。こうした「併存症の問題」については、実はシリーズ1でも一部についてはお伝えしていました。しかし、読者の混乱を避けるために最小限の記載にとどめておりましたので、今回のシリーズ2・3を通して詳しく解説させて頂くことにしたのです。

 シリーズ2・3では、主人公まさや君の中学1年生から高校進学後までの物語を描いています。「OD複合型」への理解と同時に、複合要素の中でも特に多くを占める発達特性や知的アンバランス、さらには学校の対応に焦点を当てています。

 

 

マンガでは、保護者、学校の先生など様々な登場人物たちの誤解を通し、正しい認識を伝えている

 

 

不登校を取り巻く「誤解」から脱する

必要なのは「教育医療連携」

 

 本書は『脱・「不登校」』というタイトルですが、これは「<学校に行かないこと>から<脱しよう>」と言っているのではありません。私が本書を通して伝えたいのは、「学校に行かないことで生じる種々の非常に困った誤解を含んだ状態」から脱することです。当事者たちを苦しめている様々な誤解を今回のシリーズ2・3で取り上げました。

 例えば、保護者や学校の先生の中には、「こだわりが強い子がODになりやすい」などと、本人の性格や特性がODの原因であるかのように誤解されている方がいます。しかし、ODは本人がもともと持った「体質」であり、この体質と本人の特性やキャラクターはまったく別物として考えていかなければなりません。それらを踏まえた上で、本書では、休養や薬の調整によって身体と気持ちを整える「内的環境調整」、周囲の理解や配慮を求める「外的環境調整」の両面のアプローチについて紹介しています。

 また、シリーズ3で大きなテーマとしているのが学校の対応です。近年、学校現場でもODや発達特性への理解が広まりましたが、実はそこにも多くの誤解が生まれています。

 例えば、過度な支援や合理的配慮を行うことで、結果的に十分な生徒対応ができず、子どもたちに新たな困り感が生じてしまうケースが見受けられます。子どもたちにはそれぞれの歩幅があり、その歩幅自体も成長によって変化するはずなのですが、多くの学校では「支援」という名目で「一律の階段」を作ってしまっています。すると、その階段に合わない子どもが出てきてしまい、支援は堂々巡りで際限がありません。本書でも、シリーズ2でOD症状や学校への登校が安定した主人公が、シリーズ3では、学校の個別支援の導入によって症状が再発してしまう場面が描かれています。

 私が医療者として学校に求めているのは、具体的に「何か」をするのではなく、本人が求めていること、やりやすい方法を尊重して対応してほしいということです。決して、学校の先生方に「何かを負担してください」と言っているのではありません。

 ただ、子どもたちの「外的環境」の多くを占めているのが学校であることは確かです。一概に「学校の先生が悪い」と言っているのではなく、そこで生じている多くの「誤解」が、子どもたちを苦しめているのです。

 その要因の一つに、これまで教育現場と医療現場とが共通理解を深めてこられなかったことがあると思います。子どもたちの困り感を解消していくためには、双方が歩み寄り、互いの視点や疑問をぶつけあう活動や共通認識を深めていく「教育医療連携」が不可欠です。

 

 

 

自分の矢印に従った進路選択を

 

 実は、そうした思いが形になり始めている事例があります。それが2021年に開校した不登校特例校「岐阜市立草潤中学校」です。開校にあたり、私は教育委員会の方々と共に準備をさせて頂く機会に恵まれ、通常の校医に加え、新たに「こころの校医」という役職を正式に設置頂くこととなりました。

 開校から1年が過ぎ、入学した「元不登校生」の生徒たちは、自分の気持ちで「学校へ行きたい」と登校するようになり、中学3年生は自ら選んだ高校に進学していきました。これは、外的環境の変化が大きく影響した結果とも言えます。

 子どもたちが「誤解を含んだ不登校状態」から本質的に脱していくためには、自分自身から出てくる「気持ち」「やり方」「選択」など、その方向性と強さを示す「自分の矢印・ベクトル」を実感することが最も大切になります。

 詳しくはシリーズ3で記載しましたが、不登校の子どもたちの多くは、学校の先生、友達、保護者といった外的環境から放たれる強力な他者のベクトルに引っ張られ、自分が感じている矢印やベクトルが、「自分自身から出たものなのか」「誰かに影響されたもの<合成ベクトル>なのか」と混乱状態にあります。「学校を休むこと」「保護者が何も言わずにそっと見守ること」が重要な理由は、この強力な合成ベクトルから本人を逃れさせ、自分の矢印・ベクトルを再発見してもらうためなのです。

 私は、こうした他者のベクトルに影響されない環境こそが、通信制高校だと思っていました。通信制高校には、構造的(仕組み)に学校や先生方が強いベクトル合成をしてこない利点があります。それは、卒業に必要な最低限の学習を求められるだけで、あとは自分の意思により学校生活(もちろん学校に行かず、学校外の活動を行うことも含め)を作っていける仕組みだからです。

 実は、草潤中学校は設計段階から通信制高校の良い点を取り入れていきました。結果的に、独創的な学校づくりが実現され、子どもたち自身から出てくるベクトルを尊重する学校となっているのです。今後、様々な検証も必要ですが、とても良い試みが進められています。このような学校が、全国的に広がることを私は願っています。

 進路選択においては、「最終的に自分で選択した」と自分の矢印に従って決める過程が、本人の今後の人生において非常に重要になっていきます。仮に順調に人生が進んだとしても、この過程を踏んでいなければ、その後の就職、転職といった様々な場面でつまずいてしまうかもしれません。

 また、自分で納得した進路を選べたとしても、それは「最初の一歩でしかない」という理解も必要です。高校は、他者のベクトルと上手に向き合っていける「リハビリの場」でもあります。安心してリハビリができる環境を得るためにも、まずは周囲の意見や情報の謳い文句に流されず、自分の矢印に従った進路を選んでほしいと思います。

 

 

【書籍情報】

マンガ 脱・「不登校」2

起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応

発 行:学びリンク

A5版:196ページ

定 価:1,540円(税込)

ISBN:978-4-908555-55-8

 

 

マンガ 脱・「不登校」3

起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし

発 行:学びリンク

A5版:192ページ

定 価:1,540円(税込)

ISBN:978-4-908555-56-5

 

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