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子どもたちの「具体的なこと」を知って【椎名 雄一さん】
2022年01月28日
『♯若者の本音図鑑』『不登校・引きこもりから抜け出す 7つのステップ』
著者 椎名 雄一さん
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2021年夏に2冊の新刊を発行した心理カウンセラーの椎名雄一さん。
不登校の子どもの心理や若者との溝を埋めていくためには、子どもたちをより「具体的」に知っていく必要があると話します。今回の2書を執筆するにあたった経緯や社会的背景、そして本書を通じて伝えたかったメッセージなどをうかがいました。
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結果までにある何十択もの選択肢
1/7ずつ、戦略的に、順を追って
少し前まで、不登校の保護者も子どもの状態をざっくり「不登校」としか表現できませんでした。最近は「部屋から出られない不登校」や「勉強が苦手な不登校」などとタイプで分けて言えるようになり、これは大きな変化だと思います。このように具体的に「分ける」ことで、その子が本当に困っていることが明確になり、正しいアプローチにつながっていくんです。
ただ、今の子どもたちを理解するには、その具体性をもっと掘り下げていく必要があります。「ゲームばかりしている」と言っても、親はどんな内容のゲームなのかまでは答えられません。ゲームも今は種類やタイトルがたくさんあり、子ども同士でプレイしているものが違う。そこに、ただ「ゲームやめなさい」と言っても会話がかみ合わないですよね。タイトルやキャラクターの名前を言えたり、一緒に戦略を考えてみたり、同じ世界観で向き合わないと子どもは心を開いてくれません。
不登校の子どもを見守るべきか登校刺激すべきかという議論もありますが、どちらにしても、そこに行きつくまでに何十択もの選択肢があるんです。そこを細かく「分けよう」という話で、どちらにしても「戦略的に」見守るであり、刺激する、なんですね。その戦略が49あるんですが、多くの人は整理せずに思いつきで行ってしまうので難しくなります。だから、それを7分の1ずつ、順を追っていこうというのが「7つのステップ」です。
若者は本音を言わない
一方、そんな若者たちの「具体的」をより知ってもらいたいと思い、まとめたのが「#若者の本音図鑑」です。今の若者たちが持つ具体的な生き方やコミュニティ、使っているアプリなどを単純に知ってほしいという思いがありました。
今の若者の「友達100人」には、ネット上の友達も含まれています。でも、昭和世代は、きっと学校での友達をイメージしますよね。その根底が違うのに、昭和と平成が「友達100人」について語り合ってもかみ合いません。
昭和世代が今の若者の感覚をどれだけ知れるかがカギです。でも、若者のほうから「価値観が違う」などと本音を言うことはありません。比較できる経験がないし、本人はそれが普通の感覚だから言葉にできないんですよ。
ここで本音を語ってくれているのは、その中でも「言える子たち」です。大人はそこから拾っていくしかない。読んだ時に、「うちの子とは違う」と思わないことが大切で、むしろ、そう思った感覚こそが、その親子にあるギャップそのものだと思います。「うちの子も思っているかも」という視点で読んでほしい。最初から批判的な視点で見ずに、一度飲み込んでみることがこの本を読むコツかなと思います。
どちらも価値観の否定はつらい
それなら大人から歩み寄りを
最近相談を受けた子は、世界を旅しながら子どもを育てたいと言っていました。もし、その子の親が昔の価値観で「子どもは同じ地域でずっと育てるもの」と言ってしまったら、その子のビジョンや成長の芽を摘むことになります。一方で、若者を理解している「つもり」になってしまう大人も多いです。自分が思う以上に、自分の中に昭和的価値観があるということに気づいてほしいと思います。
親グループで話をしていると、「学校の体育教師が理解なくて」などという話題で盛り、その1年後も同じ話をしていたりします。一方、同じ話題を若者に聞くと、「そういうことがあったので自分で塾を立ち上げました」と行動に移しているんですね。このコロナ禍でも、コロナを言い訳にして何もしていないのは、ほとんどが僕と同世代の人たちです。
でも、大人が長年培ってきた価値観はそう簡単に覆せません。先ほどの事例も、「でも、上手くいくの?」が昭和的な反論だと思うんです。ところが、実はその子、私に役員になってほしいと持ちかけてきた。要は「ビジョンはあるけど経営はわからないから、経営者の先生がやってよ」ってことなんです。すごい賢いですよね。昭和感覚なら「始めたことは全部自分で」となるんですが、今の子たちは人を上手く使って頼ることができる。この感覚、この違いを、ぜひ『#若者の本音図鑑』から味わってほしい。
大人が若者を理解するには、どこかで自分の価値観を否定しなきゃいけない。苦しい場面もあると思うのですが、考えてほしいのは、同じように、若者も昭和の価値観に歩み寄ろうとして苦しむってことなんです。歩み寄るのに、どちらかが痛みを味わうのなら、それを被るのはやっぱり大人のほうじゃないかな? というのが僕の発想です。だから大人のほうから学んでほしい。その最初の入口として、この2冊を手に取ってほしいと思います。
【椎名雄一さんプロフィール】
1973年千葉県生まれ。電気通信事業会社に入社後、20代でうつ病を発症し、約10年間、ひきこもり、自殺未遂などを経験。その後、自身の闘病生活を人のために活かしたいと一念発起し、心理学、心理療法を習得。自らの経験と患者の立場に立った独自のカウンセリング理論「椎名メソッド」を構築し、多くのクライアントを社会復帰へと導いた。現在は各方面でカウンセリング講座や講演を実施しながら、多くの若者を支援している。
椎名雄一さんが主催する保護者会
保護者ラボ(ほごらぼ)http://hogo-labo.com/
不登校ひきこもりで悩む中高生とその保護者の会です。1,500人を超える保護者がオンラインで情報交換をしています。
<書籍紹介>
一人ひとりが多様な「答え」を持っているのが今の時代。平成生まれの若者たちの心理や行動を理解できず、苦労する昭和生まれの大人や保護者に向けられた本。若者との感覚のズレ、驚き、違和感など、そのナゾを説くヒントがたくさん詰められています。
発行:学びリンク
定価:1,760 円(税込)
ISBN:978-4-908555-44-2
体裁:A5 判 144 ページ
部屋にこもってしまった子どもは「何もしてほしくない」かも。結果を急ぎすぎて、かえって状況を悪化させてしまうかもしれません。難しいことは分割して考えればいい。7つのステップ×7つのポイントを意識して、小さなステップで前に進もう。
発行:学びリンク
定価:1,540 円(税込)
ISBN:978-4-908555-43-5
体裁:四六判 160 ページ