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【取材レポート】通信制高校生向けの給付型奨学金を創設 福岡の財団法人
2026年10月15日
〇交通費やサポート校費まで全般支援
▲久留米市にある「公益財団法人ちくご川コミュニティ財団」
福岡県と隣接3県で活動する「公益財団法人ちくご川コミュニティ財団」(福岡県久留米市)が、地元企業と連携した冠基金を創設し、通信制高校やフリースクール等を利用する若者への給付型奨学金支援を行った。奨学金は今年5月に募集を開始し、9月に4名の給付を決定した。
基金を創設したのは、福岡県久留米市で無農薬野菜の栽培と飲食店経営のほか、就労移行支援事業などを展開する企業「おなか元氣ぐるーぷ」で、基金の名称は「おなか元氣基金」。通信制高校やサポート校、フリースクール等を利用する高校相当年齢(15〜18歳程度)の若者に対し月額2万円を支給する。支給対象は授業料のほか、教材費、交通費、サポート校費用など、修学に必要な実費全般を賄う。
財団はこれまで不登校の小中学生がフリースクール等を利用するための基金「子どもの多様な学びを保障する基金」(通称:たまきちゃん)や「生田幸平・裕子基金」などを創設していた。今回は高校生世代で主に通信制高校やフリースクール等に通う若者を対象としており全国的にも珍しい奨学金制度となる。
創設の背景には高校生支援への課題がある。財団で理事長を務める庄田清人さんは「高校を中退してしまうと、その後の状況を追いづらくなる。学びが途切れてしまうと、自立や就労に結びつかない」とし、義務教育を過ぎることで公的支援も手薄になり、社会的孤立を生みやすくなると話す。
一方、基金を創設した「おなか元氣ぐるーぷ」は、飲食店のアルバイト雇用や福祉事業を行う中で、経済的理由や不登校などで高校を辞めてしまう事例のほか、ひきこもりを経て福祉につながる若者と直面してきた。今回の基金創設は、そうした両者の課題意識が合致したかたちだ。
〇選ばれやすい通信制高校だからこそ
特に不登校を経験した子どもの多くは通信制高校を選択しやすい。その反面で経済的理由で退学を余儀なくされるケースもある。文部科学省によれば、通信制高校に在籍する生徒の約29%がひとり親家庭にあり、心療内科等に通院歴のある生徒が約21%いるとしている(令和5年度)。庄田さんは「通信制高校は講座費用やスクーリング費用など見えない学費も多い。就学支援金も授業料を先払いするかたちの学校もあるため、学費面で進学をあきらめてしまうことも少なくない」と話す。
今年度から高校生に支給される就学支援金は所得上限の撤廃と支援額が拡充され、高校に支払う授業料が実質無償となった。その影響で私立高校へ進学する生徒が増加しているが、支給対象が授業料に限られることから、その他の諸経費で負担を覚える家庭も多い。今回の基金はこうした諸経費やサポート校費までを対象としている。庄田さんは「無償化制度の“すきま”を見越して始めた制度ではない」としつつも、諸経費の負担が進路選択に影響することは大いにあるという。
〇「今の学び」を支え、「将来の働く」を支える
▲理事長を務める庄田清人さん
5月の告知直後から多数の応募があり、7月には募集を停止した。「当然、現状の4名では足りないと思っている」と庄田さん。「私たちの組織自体が大きくなることも必要ですが、活動が広く認知され、各地域で同様の支援組織や取組みが広がってもらえたら」と話し、他団体に対してはプログラム設計などでノウハウを提供しながら連携を図っていきたいとしている。
財団の役割には社会課題に対する環境整備もある。市民や行政、企業が課題解決に向けた取組みを起こす契機づくりもそのひとつだ。前述の「たまきちゃん」は西日本新聞との協働でクラウドファンディングを実施し、社会的認識を高めながら具体的支援につながった。実際の波及効果もあり、この取組みを知った福岡県大野城市は、後に市独自のフリースクール利用補助事業を開始している。
ただ、義務教育段階と高校段階では支援の意味合いも異なってくる。庄田さんは「高校生はその後の自立や就労が見えてくる段階」と指摘する。今回の奨学金は「いまの学びを支えることと、将来の働くを支えることの2つの意味を持っている」と支援の意義について説明した。
また、子どもの進路が保障されるだけではなく、家庭の心理的負担も軽減できる。「経済的な安心が得られると保護者自身も動きやすくなる。実際に働き出されて収入が増えた家庭もあるなど、状況が好転していく事例もある」。
一方で寄付を行う企業のメリットは何か。「今回の『おなか元氣』さんは純粋な思いから地域課題を解決しようと支援してくださりました。ただ、私たちとしては支援を通して若者が地域に愛着を持ってもらうことも考えている。別の団体支援では、お世話になった御礼として、そこで働きたいという若者も実際に出てきています。『おなか元氣』さんがそれを望んでいるわけではありませんが、これは企業の人材確保という面からしても明らかに効果が出ている」と話す。
もちろん給付をして支援は終わりではない。給付後は専門の社会福祉士が定期的に状況を確認し、進学した通信制高校とも連携を図りながら継続的な支援を行う。庄田さんはこうした支援を「伴走型奨学金」と位置付ける。支援した若者を継続的に見守っていくためには、受け入れ先の学校へのフォローも必要だ。庄田さんは「通信制高校も多様にあるため、今後は各校とも関係を築いていきたい」と話す。
(取材・文 学びリンク 小林建太)


