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お知らせ
「大したことない」と 余裕ある笑顔を得てほしい【酒井秀光さん】
2022年04月01日
『不登校の9割は改善できる』著者
酒井秀光さん
(一般社団法人ダイバーシティ・エディケーション協会 理事長)
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2022年3月、学びリンクより新刊『不登校の9割は改善できる―たった5つのステップ―』を出版した酒井秀光さん。通信制高校サポート校「成美学園」を15年以上運営し、多くの不登校生徒や家族たちと関わってきた中で導き出した一つの答えを本書にまとめています。「そもそも不登校とは、そこまで子どもや家族を苦しめるほどの問題なのか」。これまでの不登校に対する捉え方を前提から覆し、「解決」ではなく本質的な「改善」と「自律」を目指す本書について、お話を伺いました。
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不登校は「問題」ではなく「状態」
不安の反対語は、安心ではなく「余裕」
私がこの本を出版しようと思ったきっかけは、「不登校とは何か」という前提を、保護者の方々に改めて考えてほしいと思ったからです。
今、日本は少子化なのに、なぜ不登校の子どもが増えているのか。これだけ不登校支援が叫ばれているのに、なぜ減少しないのか。それは、そもそも根底にある考え方が違うからではないのか。
子どもたちと関わる大人やマスコミの報道も、根底には「不登校は問題である」という意識があります。そうしたメッセージが子どもや家庭を追い込んでいるのですが、不登校とは問題ではなく、「学校に行っていない」という状態を指しているにすぎません。では、なぜその状態が増えているのでしょう。
今の日本の教育制度の根本は約150年前に生まれています。どんな分野も時代とともに変化しますが、学校教育はそう大きく変わっていません。ところが社会全体や子どもたちは急激に変化している。日本の教育システムは非常に優れたものであり、私もそれを否定するつもりはありませんが、「合わない」子どもたちが増えてきたのは至極当然のことです。つまり、増えたのは不登校ではなく「学校に合わない子ども」だということなんです。
「合わないのなら環境を変えればいい」という、ただそれだけのことなのですが、不登校を問題と捉えてしまうと、学校に行くことが正解になる。ですから、実は不登校を支援している立場の人の中にも学校復帰をゴールにしてしまう人がいます。しかし、子どもはそもそも学校に合っていないのです。
学校に行けば、それだけで不登校は解決します。親はそれで一定の安心を得られますが、「また行けなくなるかもしれない」という不安が続き、本質的な改善を得られません。ですから、私は「解決」という言葉を使わないのです。不安の反対語は、安心ではなく「余裕」だと思っています。家族や周囲の大人に「不登校なんて大した問題じゃない」という余裕が生まれることが第一歩なのです。
人は変化を嫌う
子どもが知らぬ間に「変わる」
では、学校が変われば良いのでしょうか。本書の中で重要なキーワードとなるが、心理学者アルフレッド・アドラーの「あなたの正義の反対は、悪ではなくて他人の正義」という言葉です。私たち人間は、上手くいかないことがあると、自分以外の誰かに変化を求めます。しかし、自分が否定したい相手にも確固たる正義がある。つまり、他人を変えることなどできず、まして大勢の人たちが複雑に関わり合う教育システムなど、変えることは不可能です。
それは子ども自身も同じです。不登校支援の多くは子ども自身に変化を求めている。しかし、変わるのは子どもではなく、親自身や周囲の環境です。気温が上昇して汗をかいたり、緊張する場面で動悸が激しくなるなど、人間の身体は変化を嫌います。でも、私たちは、いつの間にかできなかったことができるようになったり、無意識に日々成長していきます。むしろ、自分の成長を一つひとつ自覚しながら生活などしていません。
ですから、不登校の子どもたちを「変えよう」「成長させよう」とするのではなく、本人が気づかないうちに変わっていけるように、私たちがサポートしていく必要があります。子どもが変わるのは最後の段階であり、そこに行く着くまでに必要な要素がある。その5つを本書にまとめました。
しかし、それは決して難しいことではありません。読んでみたら「なんだ、そんなことか」と思う内容ばかりです。しかし、子どもの不登校に焦る親御さんたちほど「そんなこと」に気づけていません。本書を通して、親御さんや子どもたちに余裕ある笑顔があふれることを願っています。
【酒井秀光さんプロフィール】
一般社団法人ダイバーシティ・エディケーション協会理事長。
1955年、宮崎県都城市生まれ。音楽学校卒業後、演奏活動を続け、1984年、千葉県茂原市に音楽教室を設立。2007年に通信制高校サポート校「成美学園」を開校し、2009年、千葉県教育委員会指定の技能教育施設として認可。現在20カ所に校舎を構える。2015年、福祉事業部を立ち上げ、放課後等デイサービス、就労移行支援事業所を13事業所開所した。2020年3月に成美学園学園長を引退。日本の教育を変える活動に専念するため、一般社団法人ダイバーシティ・エディケーション協会を設立。著書に『不登校にありがとう』(サイゾー)がある。
<書籍紹介>
<主な内容>
①前提が変わる ―不登校は「問題」じゃない―
②環境が変わる ―自分に合う居場所にするだけ―
③家族が変わる ―価値観を捨て、親が変わる―
④行動が変わる ―“変化に気づかない”スモールステップ―
⑤未来が変わる ―未来は選べる、変えられる―
巻末インタビュー「教育を変える」を実現した人
学校法人立花学園 立花高校 齋藤眞人校長
発行:学びリンク
定価:1,320円(本体1,200円+税10%)
ISBN:978-4-908555-51-0
体裁:四六判176ページ