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第5回 就職はスキルと職業観を育てる ◇◇『通信制高校卒業後はどうなっているの?』(6回連載)
2024年06月10日
◎通信制高校ならではの就職分野も
卒業時就職率を見ると、2021年度卒業生(調査対象:卒業2年後)の就職率は17.4%(241人)、16年度卒業生(同:卒業7年後)は22.5%(295人)でした。通信制高校卒業生全体の就職率は、過去5年間の推移を見ると13~16%となっていることから、調査対象者の就職率は高いものになっています。
23年3月卒業の高校生の就職先を産業分類別に見ると課程別では次のようになります。 どの課程も製造業への就職がトップを占めています。製造業は,食料品、紙・パルプ、化学、鉄鋼、金属とわが国の産業構造の中核を占めていることを反映しています。
通信制高校卒業生で、2番目の宿泊業・飲食サービス業は高校生時代にアルバイトなどを通じて仕事になじんだことをきっかけにしている場合もありそうです。 また、全日・定時では上位に入っていない生活関連サービス業・娯楽業は、この分野に理美容関連が含まれていることから通信制高校在学中のビューティーコースなどで関連スキルを身につけた人の就職先となっていると思われます。
【高校卒業後の産業分類別就職先(23年3月卒業生)】
▼通信制高校卒業生
① 製造業20.7%、②宿泊業・飲食サービス業 13.7%、③卸売業・小売業10.9%、④生活関連サービス業・娯楽業9.2%、⑤建設業9.0%
▼全日制高校卒業生
① 製造業41.3%、②建設業9.7%、③卸売業・小売業9.3%、④運輸業・郵便業5.0%、⑤医療・福祉業4.6%
▼定時制高校卒業生
① 製造業34.0%、②卸売業・小売業11.6%、③医療・福祉業9.3%、④建設業9.2%、⑤運輸業・郵便業7.7%
※出所:学校基本調査(文部科学省)
◎就職で得た知識を次につなげるには
表1の卒業時「就職」のその後を見ると、21年度卒業時就職者の卒業後2年間の途中経過では、「在職中」(78.8%)、「退職した」21.2%(51人)となります。厚生労働省の調べによると新規高卒就職者の3年以内離職率は37.0%とされますから、それに比べると在職率が高くなっています。
「退職した」人の2年後現在の状況を見ると、「アルバイト」45.1%が最も多く、次いで「在職中」29.4%が続きます。
「アルバイト」中の人の自由記述回答を見ると「高卒後入社したところは正社員という初めてのことだらけでストレスがたまり、元々の心の病気が悪化してしまい休みがちになり退職させてもらいました。退職前に本当に自分がやりたかった職業を見つけてアルバイトで入りました。今の職場は相談できる人もいて一人で抱え込まずにメンタル的にもよくなりました」という人もいます。
「退職した」→「在学中」という人はいませんでしたが、なかには「来年専門学校に進学予定。アルバイトでその資金を準備中」という人もいます。
一方、16年度卒業時就職者の卒業後7年間の途中経過を見ると、「在職中」(59.0%)、「退職した」41.0%(121人)となります。20代半ばまでに約4割の人が退職しています。
「退職した」121人の7年後現在を見ると、「在職中」という人が最も多く71.1%を占めています。卒業2年後はアルバイトが多かったのに比べるといくつかの変遷を経て20代半ばまでに就職に至った人が多いものと見られます。「アルバイト」は6.6%となっています。
結婚して主婦となったという人もいます。子育てをしながら在職中という人は「結婚して、子育てをしながら仕事をして友だちにも会ったりと日々を過ごしています」という近況と、母校へのコメントとして「私にとって大切な3年間でした。支えてくれる人、心配してくれる人がいるということは嬉しかったです」と伝えています。
表2で見るように「退職した」→「何もしていない」という回答は、16年度卒業生19.0%、21年度卒業生19.6%でほぼ同率となっています。「何もしていない」という回答者には、「退職後派遣で何カ所か働いたが、今は無職」というようにそれまでの経験を活かせない場合もあるようです。こういうケースの場合は、それまでに得たスキルや知識を次のステップで活用できるキャリア相談ができる機関や相談者につながれると有効ではないかと思われます。
※文中にある「卒業後2年後」「卒業後7年後」とは、調査時期の関係で前者は卒業後1年8カ月~10か月、後者は6年8カ月~10か月の時期になります。
今回は、『就職はスキルと職業観を育てる』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回は、『卒業後を見越して考えておきたいこと』についてご説明します。次回もどうぞよろしくお願いします。