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通信制高校卒業生アンケート調査結果報告 ①「進路未定」は半減するが・・・

2024年04月10日

第1回「進路未定」は半減するが・・・『通信制高校卒業後はどうなってるの?』(6回連載)

 

◎「進路未定」より「何もしていない」が問題

新しい学校の会(桃井隆良理事長、略称:新学会)は、3回目となる大規模な通信制高校卒業生アンケート調査を実施し3月に結果を発表しました。私は同会の事務局長を務めています。

今回のシリーズ『通信制高校卒業後はどうなってるの?』は、この第3回通信制高校卒業生アンケート調査をもとに卒業時進路区分ごとに実情を報告していきます。

通信制高校卒業生調査の実施背景は、卒業時、卒業後に懸念されるものがあることです。それは主に次の3点です。

① 卒業時「進路未定」率の高さ
② 大学、専門学校進学者の退学率の高さ
③ ①及び②の退学後の「何もしていない」率の高さ

※「何もしていない」とは“働く”や“学ぶ”手前でどうすればいいのか分からない状態

下の図1で見るとおり通信制高校は、全日制、定時制各高校に比較すると卒業時進路未定者の割合が高くなっています。通信制高校から次の進路へのステップが踏み出せず、社会参画するための土台が学校生活のなかで培われていないという懸念がありました。第1回、2回調査では、卒業時進路未定の卒業生は、その後「何もしていない」層が一定割合存在し、長引く様子があります。



ちなみに進路未定とは、進学でも就職でもない人のことです。文部科学省の説明では浪人生、就活中の人、家事手伝いは進路未定に分類されます。この説明でも分かるように一概に“進路未定=問題あり”とはなりません。私の知る卒業生の中にも一旦進路を決めずに、あえてブランクを作ったことで自分の目指す方向を見つけて活躍している人もいます。

懸念されるのは進路未定のその後「何もしていない」人がその状態のまま長引くことだと私は見ています。「何をしたいの?」と問われても、「それがわかればやってるよ……」という心境です。

◎「進路未定」は6年後半減する!?

時系列で進路未定比率を見ると改善傾向にあります。上の図1で見るように2012年度の進路未定比率約42%は、22年度約32%に下がっています。10年で10ポイント下がりました。

この背景にあるのは下の図2で見る「大学等進学」と「専門学校進学」の各比率アップです。10ポイント低下の要因としては、大学進学が8、専門学校進学1、就職1といった貢献度です。これは通信制高校各校の進路指導やキャリア教育のたまものでもあるでしょう。



下の表1は、公立・私立通信制高校平均と調査サンプル(21年度卒業生、16年度卒業生)のそれぞれの卒業後進路状況です。調査対象の新学会加盟14校の卒業生は、通信制高校平均に比べると進学率が高く進路未定率は相対的に低くなっています。進路未定率は、通信制高校平均のほぼ半分の約15%程度です。この背景も大学・専門学校進学率が通信制高校平均の約50%より約14~18ポイント高い約60%台半ばから後半という点が貢献しています。



通信制高校の今後は、この方向(進学率上昇、進路未定率低下)に進んでいくと思われます。進路未定率は、6年程度先、新入生が入学・卒業のサイクルを2回程度繰り返した後には全体でも進路未定率は現在の半分程度約15%になるでしょう。

代わって相対的に比率を増すのは大学進学です。ただ、進路未定率は下がるが懸念事項は残るかもしれないということです。

今回の調査によれば大学進学者は、卒業後2年間の途中経過では退学率は3%です。これは大学生退学率平均の2~3%と同程度ですが、卒業後7年間を見ると退学率約20%となり、しかも退学者の約38%が7年後には「何もしていない」状態となっています。4年制大学後半に“鬼門”が待っているかもしれません。

専門学校進学者は卒業後2年間の途中経過で退学率は約12%です。専門学校退学率は、6~7%とされますからこの間の退学率は専門学校平均の2倍程度となります。卒業後の7年間では退学率が約21%となり、専門学校平均退学率に比べるとかなり高い比率になっています。退学した学生の中には「通信制高校出身だったので専門学校の週5日はきつくて最初から自由度のきく学校選びをしていればよかった」という回答もありました。専門学校選び段階で“無理”があったかもしれません。
 

(新しい学校の会 第3回通信制高校卒業生アンケート調査 ―概要― )

通信制高校卒業生アンケート調査の調査対象は、新学会加盟14校の卒業後2年後と7年後の卒業生を対象としています。卒業後2年後の卒業生は少し前までの成人の20歳程度、7年後卒業生はある程度社会で自立・安定しているだろう25歳程度を想定しています。通信制高校卒業後、一定期間のなかで社会参画の状況の変遷を追っています。有効回答数は合計2,703人(卒業2年後卒業生:1,389人、卒業7年後卒業生:1,314人)でした。調査期間は2023年10月中旬~2024年1月中旬。Web調査と電話ヒアリング調査を併用しています。

※「卒業後2年後」「卒業後7年後」とは、調査時期の関係で前者は卒業後1年8カ月~10か月、後者は6年8カ月~10か月の時期になります。

(文責:学びリンク代表 山口教雄)

今回は、『「進路未定」は半減するが・・・』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は、『「何もしていない」状態の苦しさ』についてご説明します。次回もどうぞよろしくお願いします。

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