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取材レポート

不登校当事者調査「支出増えた」家庭99.5% 理解者の有無がその後の心境に影響

2024年01月12日

(取材・文:学びリンク 小林建太、小野ひなた)

 

 

不登校のきっかけ「先生との関係」が1位 教員の多忙化が影響か

 

「NPO法人多様な学びプロジェクト」が1月11日(木)、東京都内でシンポジウムを開催し、昨年末に行った全国調査の結果を公表した。

 

実施されたのは「不登校のこどもの育ちと学びを支える当事者実態ニーズ全国調査」。昨年10月6日から12月31日までWEB上で行われ、全国から保護者1,935件、18歳以下の不登校経験者474件、19歳以上の不登校経験者395件の有効回答を得た。

 

報告によると、「学校に行きづらいと思い始めたきっかけ」では、18歳以下は「先生との関係」が36.3%で最も多く、次いで「勉強は分かるけど授業が合わない」35.2%、「学校のシステムの問題」28.3%が上位となった。この設問は保護者回答でも同様の結果となり、1位の「先生との関係」は43.5%で、子どもの回答より高い結果となった。

 

一方、19歳以上の不登校経験者の回答では、「友達との関係」が42.3%で、18歳以下、保護者に比べて高い結果となった。年代別の比較では、30代から50代が「友達との関係」が最も多い回答であったのに対し、10代、20代は「先生との関係」が高かったことから、報告を行った代表理事の生駒知里さんは「近年の不登校のきっかけに変化が起きている可能性が感じられる」と指摘した。

 

報告では、教員の実態に関して、精神疾患を理由に病気休職した公立学校教員が過去最多の6,539人(文部科学省調査)いる背景を取り上げながら、「先生が窮状に陥っていることがわかり、バックアップする体制の拡充が急務であることがうかがえる」と指摘された。教員が悪者になる印象を与えてしまうことから、「もう少し構造的な要因を探れたら」と、今後の検証についても伝えられた。

 

 

(NPO法人多様な学びプロジェクト代表理事の生駒知里さん)

 

 

「年収が減った」4割 求められる経済的支援

 

なお、調査では保護者が様々な場面で苦労を強いられている状況がうかがえた。子どもへの対応や将来について聞いた設問では、86.3%の保護者が悩んでいる状況が明らかになり、特に「すごく悩んでいる」とした人が最も多い33.2%となった。

 

また、子どもの不登校をきっかけとする家計の変化もうかがえた。世帯年収が減ったと回答した保護者は36.9%となり、ほぼすべてとなる99.5%の保護者が「不登校をきっかけに支出があった」と回答した。支出の内訳では「食費」が81.2%で最も多く、次いで「水道・光熱費」57.8%、「家で過ごすための学習費」51.2%が上位回答となった。

 

子どもの不登校をきっかけに働き方が変化した保護者は7割以上に上り、「早退・遅刻が増えた」「休みがちになった」「雇用形態が変わった」「休職、転職した」「退職した」との回答が多く、収入や働き方の変更を余儀なくされている状況も明らかになった。

 

保護者が行政に望むものとしては、「フリースクールなど学校以外の場が無料または利用料減免」72.8%、「フリースクールなど学校以外の場に通った場合の家庭への金銭的支援」72.7%など、フリースクール利用への経済的支援が上位2位を占め、ほかでは「学校教員への研修」70.7%、「学校が変わってほしい」69.8%と、学校に対する要望が高い結果となった。

 

 

理解者の存在がその後の心境に影響

 

不登校経験者については、不登校当時の理解者の存在の重要性も明らかになった。

19歳以上の不登校経験者に対し、「(当時)あなたを理解してくれる人はいたか」を聞いたところ、「母親」が最も多い40.3%となった。一方で、次に多かった回答は「誰もいなかった」28.9%となった。

 

「自身の不登校経験についてどう感じているか」を聞いた設問では、「よかった」20.6%、「まあまあよかった」20.4%、「どちらともいえない」26.2%、「あまりよくなかった」12.0%、「よくなかった」20.9%で回答が分かれた。ただ、この結果と理解者の有無をクロス分析したところ、不登校経験時に「理解者がいた」と回答した人は「いなかった」人に比べて、自身の不登校経験を「よかった」「まあまあよかった」と回答する割合が高く、一方で理解者が「いなかった」人は「いた」人よりも「あまりよくなかった」「よくなかった」と回答する割合が高い傾向が見られた。不登校時の理解者の存在が、その後の心境に影響を与えている様子が明らかになった。

 

 

(調査結果についてコメントした東京学芸大学教授の加瀬進さん)

 

 

「立場や価値観で読み方が変わる」東京学芸大教授

冷静かつ包括的な分析が必要

 

結果報告を受け、東京学芸大学教授で「こどもの学び困難支援センター」センター長の加瀬進さんがコメントを行った。

 

加瀬さんはデータを読むにあたり「不登校やフリースクールに対する自分自身の価値観を振り返り、自覚的であることが重要」とし、どのような立場や価値観で読むかで評価が変わると指摘。「子どもの最善の利益と言うが、違う考え方を持っている人とどう話し合える自分なのかを自覚しておくことが重要」だと前置きした。

 

今後のデータ分析については、「調査団体なりの価値観でどの結果を注目するのか、別の角度からすると、むしろほかのサイレントマジョリティーがあるのではないかという意見もある。数値が低い部分にも様々な声があるという点も大事にしながら議論していく必要がある」とし、冷静かつ包括的な分析の必要性を指摘した。

 

シンポジウムではその後、文部科学省による基調講演のほか、各自治体事例として、神奈川県川崎市、長野県、滋賀県草津市の先進的な活動報告なども行われた。当日の模様はYouTubeで生配信されたほか、今後アーカイブ動画の一般公開も予定されている。

 

●「多様な学びプロジェクト」シンポジウム

https://www.tayounamanabi.com/symposium20240111

 

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